木村直巳『銃後の春』(ビジネスジャンプNo.18)

戦後60周年平和祈念特別読切第2弾。ちなみに前号掲載の第1弾は、天沼俊『桜さくら』、回天搭乗員に任命された青年と、彼の許婚だった女学生の物語でした。
今回の『銃後の春』ですが、すいません、スケベなオッサンの俺には何よりも未亡人の色香が強く印象に残ってしまいました(苦笑)。隣組班長に手篭めにされる、隣家の若くて美しい未亡人三池環。2月の雪降る日、待避壕で彼女に”手ほどき”を受ける主人公。……そんなところばかりが心に残って、この作品はこれでいいのか?!とも思いましたが、それは、この作品の所為ではなく、ダークサイドなエロスを心に宿した俺の方が、読み手として問題があるのでしょう。きっとそうです。少しはマジメな話もすれば、ここで描かれているのは、戦争の狂気は何も戦場にだけあるのではない、という事である。かつては人の良い酒屋の親父だった松宮が、子供が揃って出征し、女房が遠方の療養所に離れ、身軽になり、隣組班長と言う僅かばかり(なのかどうか判らないが)の権力を手中に収めた事から、隣家の未亡人をいいようにしていく。あ、でも、この手のスケベ爺と言うのは戦争中とか関係なく存在するか。今でも隙あらばどこぞの綺麗な嫁さんをコマしてやろうと目論んでいるジジイなんてご町内に幾らでもいそうだしな。閑話休題。作中で引用されている米陸軍マリアナ基地第21爆撃機軍団司令部の、東京大空襲時の発表、「我々の攻撃目標は非戦闘員への無差別爆撃ではない…… 日本の中心部に集中している工場と戦略上重要な目標を破壊することにある」…昔から米軍はこんな詭弁ばかり弄していたんだ!(怒)。こんなお題目を掲げて、実際には行方不明者を含め、10万人に近い命が奪われているのだ。これは60年前の昔話ではなく、同じような世迷言を唱えながら米軍はイラク……って、これ以上は逸脱し過ぎなので、ここでは言いません。作品の次の項に、早乙女勝元氏のインタビュー、「証言:東京大空襲の真実/知っているなら伝えよう 知らないなら学べ」が2ページ掲載されています。こちらも必読の価値あり、ぜひ読んでみて下さい。