『隠し砦の三悪人』 監督:樋口真嗣

隠し砦の三悪人2008@東宝

 3度目の正直ならず。2度あることは3度ある。『ローレライ』『日本沈没』と連発し、いまや日本の底抜け超大作の第1人者となった樋口真嗣。興行成績と裏腹に、その薄っぺらな内容から映画ファンを辟易させてきた樋口監督が今回もやっちまいました。オリジナルである黒澤明隠し砦の三悪人』の肝はと言うと、次から次へと襲い来るピンチを知恵と勇気で乗り越えて行く展開であり、この映画をリメイクするのならば最大限その見せ場を外してはならないのだが、どうにもそこいら辺りを全く持って分かっていなかったようで、脚色上も演出的工夫も何1つされずに、オリジナルと同じことをやっているところも頭が悪く見える事この上ない。ラブロマンスとか爆発ドッカ〜〜ン!!とかどうでもいいから脚色するならば、先人たる菊島隆三 小国英雄 橋本忍らに引けをとらないくらい頭を捻って作らないと。「リメイクを作るならオリジナルと同じ事をやっても仕方ない」という監督の言葉は一見もっともそうに聞こえるが、オリジナルにある魅力と全く違う斜め上に力を注ぐくらいならリメイクを作る意味自体がないのだ。(違う事をやりたいのならばリメイクではなく『ローレライ』みたいにオリジナルでやればいいだけだ。長編監督経験の無かった人のオリジナルに何十億も出すような方々がいるのだからさ)。そのスタンスは、オリジナルの『キングコング』を愛し、深い思い入れを持ってリメイクしたピーター・ジャクソンと比べれば一目瞭然だ。どうやら樋口監督のスタンスは、残念ながらピーター・ジャクソンよりも、ギラーミンや『13ウォリアーズ』のジョン・マクティアナンに近いらしい。ちゅうか、そんなに『スター・ウォーズ』が好きなら『スター・ウォーズ』をリメイクすればいいじゃん!!樋口カントク、あなたはオリジナルの『隠し砦…』を好きでもなんでもないでしょ?ただの馬鹿にしか見えない主人公の武蔵新八。凛々しくもなく聡明でもなく美しくもない雪姫(上原美佐のカッコよさの欠片にも及ばず。いま雪姫をリメイクするならばツンデレで、かつ、姫でありながらも剣の達人、くらいにはするべきだろ)。最悪なのは椎名桔平演じるダースベイダー!! どうしてこんな事をやって恥ずかしくないのか全くワカラン(笑)。繰り返すが、そんなに『スター・ウォーズ』が好きならそちらをリメイクしろよと。最悪なのは2度にも及ぶ『裏切り御免!』の使い方もで、いやアンタら使いどころ間違ってるよ!ヘンだよその使い方!!長澤まさみの「裏切り御免」に辟易したところで最凶のタイミングで流れるエンディング主題歌!!(笑)。怒りとか悲しみを遥かに超えた絶望感で、エンディングロールを眺めながらこの主題歌を聴いていたけれど、製作陣はホントにこんな歌でいいと思ったのでしょうか?? それを言ったら、そもそもこんな映画でホントにいいと思ったのか?って話だけれど。映画ファンは誰一人もハリウッド・ブロイラーのような『隠し砦の三悪人』なんて望んでいなかったと思うのだけれどね。