『世界大戦争』 監督:松林宗恵/特技監督:円谷英二

『世界大戦争』1961@東宝

 ラピュタ阿佐ヶ谷の「映画監督 松林宗恵」特集最終日。いつもならば半ズボンに裸足にサンダルで出かけるような所だが、せめてものと思い、ジャケットを羽織ったりして多少は身奇麗な格好をして家を出る。今日は上映前に松林宗恵監督星由里子さんによるトークショーがあるからだ、ただの一観客でしかないこちらだけれど、狭いラピュタの劇場で、自分の数メートル前に往年の名監督大女優が居並ぶのだ、いつもの薄汚い、だらしない格好では気が引けると言うか、申し訳ない気持ちになる(笑)。トークショーには、なんと遅れて宝田明さんも駆けつけてくれて、思い出話やこの映画への思いを語ってくれた!。この3人のお姿を拝見してお話を間近で聴けただけでも入場料分の元は採れたどころか、お礼を差し上げたいぐらいのもうお腹いっぱい状態に。文化の日での上映と言う事もあってか、宝田さんが「映画の文化の灯を消さないようにして欲しい」と繰り返し言われていたのが印象的。松林監督からは、「当時、日本の各映画会社の代表と一緒に、各国大使の方々にこの映画を見てもらった」との思い出話が語られたり。星さんは「以前もこの映画が上映される時にゲストで呼ばれたけれど、その時は都合がつかずに行かれないのを代わりに宝田さんが出演してくれた、今回もこうやって仕事が終わってから駆けつけてくれたのが嬉しい」と当時と変わらぬ東宝出身俳優同士の厚い友情を話されていた。友情もそうだけれど、この映画への思い入れがなければわざわざこうして阿佐ヶ谷まで来ようと思わないよなあ、ファンとしてはそういった言葉以上の思いが感じられたのが何よりも嬉しい。上映の際には松林監督宝田さん星さんも客席で一緒に鑑賞することに。映画は、フランキー堺さん演じる父と星由里子さんの娘、その家庭に下宿していて星さんと恋仲になる宝田さんの船員らが織り成すホームドラマと、東西冷戦下の緊迫した世界情勢がカットバックで描かれ、それが情勢の中で次第に緊迫感を増していき、遂には最終核戦争による未曾有のカタストロフへと至る展開が何度見ても素晴らしい。TV Bros.山田広野氏のコラム「活弁世界傑作劇場」(TV Bros.10/24⇒11/9号掲載)でも指摘されていたけれど、東京への水爆攻撃の危険が叫ばれ人々がパニックになりながら非難して、人気の無くなった下町の家でフランキーさんが夕日に向かって叫ぶ場面は最高に感動的で、しかもこの家の住所が三丁目、舞台になっている年代は昭和36年これこそ本当のALWAYS 三丁目の夕日』だよ!!。折りしも今日は、『ALWAYS 続・三丁目の夕日』の公開初日。デジタルで作られたノスタルジー映画も悪いとは言わないけれど、出来れば、あの当時に作られた、“本物のあの頃・本物の寂寥感”を描いた映画にも、もっと注目して再発見していって欲しいなあ。
 蛇足気味に言えば、今日は宝田明さんも主演された『ゴジラ』(1954)の公開からちょうど53年、ゴジラ53回目の誕生日でもありました。