『チーム☆アメリカ/ワールドポリス』監督:トレイ・パーカー

右も左も、東も西も、スーザン・サランドンティム・ロビンスも、ジョージ・クルーニーマット・デイモンも、『サンダーバード』も『パール・ハーバー』も、ショーン・ペンマイケル・ムーアも、そして、金正日も!、みんなみんな、まとめて笑い飛ばしてやれ!!。この世には、映画でネタにしちゃいけないモノなんて何もないんだ!!。
思えば数日前に見た『肉弾』も、沖縄が陥落し、広島・長崎に原爆を落とされ、それでも狂奔続ける軍人らオトナ達を、岡本喜八監督自身が見てきた視点から皮肉った映画であったなあ。この映画、『チーム☆アメリ』は、ストレートに判り易い反戦映画や嫌戦映画ではなく、往年の?SF者的な例えで言えば、DAICON FILM東映戦隊シリーズのフォーマットで右翼パロディをやった『愛国戦隊大日本』に非常に近い。ポール・バーホーベン監督が、SF映画スペースオペラ超大作っぽい戦争賛美プロバガン、に擬態した右翼パロディ映画(ややこしい)『スターシップ・トゥルーパーズ』を撮った事にも近い。まあ、、『チーム☆アメリ』がそれらの作品よりシャレになってない!とかやり過ぎ!などと言われ易いのは、実在の俳優やドキュメンタリー映画監督更には国家主席(!)などが実名で登場して自爆テロしたり無残に射殺されたりするからだ。そりゃ真っ当な良識ある人が繭を顰めても仕方あるまい(笑)。右だの左だの以上に、ここには、ハリウッド・ブロイラーファースト・フード映画の盟主たち、ジェリー・ブラッカイマーや、マイケル・ベイローランド・エメリッヒたちの作る、全く心のこもっていない底抜け超大作映画群への皮肉に満ち溢れている。むしろ本題はこちらで、『チーム☆アメリ』のストーリーの骨格、基本フォーマットは、彼らの作る馬鹿アクション大作デザスター映画のそれに準じて圧縮されている。努力・友情・挫折と復活・試練と勝利、とでも言うか。あれらの映画の中身の無さを、ヘロヘロのマリオネーションで再現して知らしめてくる(笑)。挿入歌の類もみな素晴らしく、「モンタージュの歌」や「パール・ハーバー 愛のテーマ」には聴いていてゲラゲラ笑い転げました。
例えばこんな歌詞
パール・ハーバー 愛のテーマ
「♪ベン・アフレックに 演技学校が必要なように 僕にも 君が必要だ 僕はマイケル・ベイ以上に 失敗を犯した そう ”パール・ハーバー”以上に 僕は あの映画以上に失敗を犯した 酷過ぎて とても耐えられない 別れてしまった彼女に 一言だけでも言いたい ”パール・ハーバー”は糞だ ごめんなさい と ♪♪
」(訳:桑原あつし)。
え?悪し様に罵ってるだけじゃないかって?!。いやそうじゃない、映画の各場面に、適切なメロディとアレンジの施された曲が、こんなアホな歌詞(褒め言葉)で流れてくるのだ。『トップガン』や『インデペンデンス・デイ』、『アルマゲドン』らに笑ってきた人なら大爆笑間違いなしだ。ミニチュアワークもイイ感じで、緻密に、でも漫画的にディフォルメされたパリやパナマ運河。それらが平成ガメラ映画のミニチュアセットレベルの緻密さで作られて、ハリウッド大作映画の文法に沿って大爆破される。どうせならクライマックスは、逃げた0000(ネタバレにつき伏字)が「オマエラ、みんなここで死ぬのら!」とか言って自分が脱出後に平穣を自爆装置で大爆破させて欲しかった。実際の映画は、主人公・ゲイリーの薄っぺらな演説で終わるから、カタルシスが得られなかった人もいるのではないかな?。こういうのってパターンで、作品中1番派手で危険っぽい大爆発が起こると、何となく映画のラストが締まって見えるモノだし。