小林治『OURSアニメ生活』(月刊ヤングキングアワーズ9月号)

アニメキャラの禍々しい髪色は何処から始まったか?」と言う考察は、以前に俺も考えた事があり、面白い着眼だとは思うけれど。ここでは論旨を外れて、ちょっと重箱のスミ的にツッコませてもらうと。TVアニメ『海のトリトン』は確かに富野由悠季(当時は喜幸)監督作品だが、「劇場再編集版のトリトンが劇場デビュー作で、1作目から総集編版(笑)」とか言ってしまうのは明らかに間違い。なぜなら、劇場版トリトンは、プロデューサー・西崎義展実写映画監督・舛田利雄の手によって再編集作業が行われており、富野監督はそれの一切の作業に関わっていないし、実際、劇場版のクレジットで「監督・富野喜幸」とは出ていないのだ。演出としてだけ表記され、その上位に、監修・舛田利雄とクレジットされている。あの頃、初期のアニメブーム、70年代後半から80年辺りまでは、TVアニメの総集編を劇場でかける場合の何割かは実写映画監督を呼び、監督や監修として祭り上げるような事が行われていたのだ(今思えば観客増員への効果、と言うより、配給側や小屋主サイドへの配慮だったのではなかろうか?)。例を挙げれば、『銀河鉄道999』の市川 崑、脚本の石森史郎、『科学忍者隊ガッチャマン』の岡本喜八、『さらば宇宙戦艦ヤマト愛の戦士たち』の舛田利雄、『あしたのジョー』の福田陽一郎などだ。今回の記述は、そういった歴史認識の欠如が現れている。……って、そこまで大げさに言わなくてもいいけれど、まあ、知らないのか、忘れてたのか、勘違いしたまま覚えているのか。「劇場版『機動戦士ガンダムⅠ』が劇場デビュー作で、1作目から総集編(笑)」と書くなら間違いじゃなかったのだけれどね。
あと、もう1つ突つけば、『宇宙海賊キャプテンハーロック』のまゆは、原作モノなので対象外、としていたが、そもそも、まゆは、原作コミックに出ていないアニメオリジナルキャラなのだ。他の地球人キャラは茶系、黒、金髪など、現実に即した髪色なのだが、「守るべき地球の象徴」=まゆだけが、存在感をアピールするように青髪になっている。……と、掘り下げて色々分析できる面白い対象だと思うのだけれどね。まあ、そこまで広げて語るのはあのコラムは短すぎる気はするけれど、どうにも、判っちゃいない書き方をしているので言いたくなるんだよなあ(苦笑)。