北崎拓『さくらんぼシンドローム  クピドの悪戯2』5巻(ヤングサンデーコミックス)

北崎拓『さくらんぼシンドローム』5

「真実の私は ただ 渋江君と 一緒にいたいだけだったのに」

 れな過去篇。映画でも有名な広島県某市が舞台…って、もう言ってしまったようなモノですが(笑) 具体的に背景の参考資料にしたのかどうかは判りませんが、れなの通う高校の俯瞰とか坂になっている細い路地とか、かの地の映画で見たような見ないような(笑) 成就しえない切ない初恋の物語と言ってみると、このれな過去篇自体がかの監督の映画と主題的にもダブってるのかも知れません。日常に、SF(“サイエンスフィクション”ではなくて“すこしふしぎ”の方)が加味されてちょっとおかしな物語が綴られる、と言うのもクピドの悪戯シリーズあの監督の映画との共通点かも。元々セクシャルな描写の多いこの作品ですが、れな過去篇では高校生れなの自慰らしき描写が2箇所(51P,92〜94P)ほどあるのが気になります。子供の肉体になり、そういう性的な事とは切り離されているれなも、元は生身の生々しい肉体を持つ“オンナ”であったのだ、という事でしょうか?? まあ、こんなトコを気になって注視しているのはスケベなオッサンの俺だけかも知れませんが(苦笑; それはさておき、上京し、流行のオンナに変身したれなが、渋江君の部屋の前で全く気づかれずにすれ違い、我が身を抱き締め人知れずに涙を流す場面は、ここまでの展開の中で1、2を争う名場面だと思います(前作『クピドの悪戯 虹玉7巻の「イイ…キミダ―――」〜「泣がない゛でよっ、む゛っぢゃん!」にはまだまだ敵いませんが)。過去篇の後は、阿川君営業死闘篇、上にも下にも引っ張られて侭ならずに苦戦する様は社会で苦労しているオッサン達には涙無くしては読めませんよ!(←そうか?)。予想通り、やはり料理が出来なかった麻生さん(前作桐生麻美が矢鱈と手料理を作る描写があったのと見事に対称的ですな。その変わり今回はれなが料理上手となっているけれど)や、麻生さんれなビミョ〜に仲良くなっていったり、後藤さんイイオンナっぷり(でも絶対報われない)もあり、なかなか美味しい描写テンコ盛りの5巻目でした。
 あ、ちゃんと麻生さんと阿川君のエッチ場面もあるよ!!(笑)