『時をかける少女』 監督:細田守

時をかける少女2006

 試写会場の中野ZEROホールを出て、いつまでもいつまでも、この映画の爽やかな余韻に浸ってずっと自転車を漕いでいたい。そんな想いにさせられた映画でした。うん、見てよかった! あと、自転車で行き来できる場所での試写会っていいなあ(笑)。
 細田守監督による劇場長編アニメーション映画の第2作目(短編中篇のデジモン映画も数えると4作目)、東映アニメから独立しフリーになってから1作目になる作品に自ら選んだ題材は、筒井康隆原作の、あの『時をかける少女』!!。細田監督を含め、30代半ば以上の俺らにとって『時かけ』と言えば、まず1983年夏に公開された原田知世主演・大林宣彦監督による尾道3部作の1作になるあの実写映画だろう。俺にとってマイフェイバリットな作品を訊かれた時に必ず挙げる3本の中の1本になっている。なんと言っても俺が映画マニアになるキッカケになった1本だ。名画座やビデオ、LD、DVDで何度見返したか判らないほどだ。で、そんな『時かけ』を、細田監督は見事に換骨奪胎し、現代の、2006年の夏を舞台にした映画に仕上げ直している。優れた青春映画の一品として、普段「アニメなんてジブリ以外見ない」というような人に是非お奨めしたい、この夏一番の映画ではないだろうか。いや、夏休み映画をまだほとんど見てないけれどね(笑)。クライマックス、時間SF特有の切なさと寂寥感、「積極的に、前向きに未来へ生きて行こう」とラストまで貫かれるテーマ、後味のいい読後感での締めくくりでした。監督を始め、スタッフ、キャスト、関係各位の皆さん、いい映画をありがとうございました。


 
 ここから↓はちょっと濃い目の話をするけれど(笑)
今回はこれまでの細田守映画の集大成正に総力戦という感じではないだろうか。過去の作品のヴィジュアルイメージや映像表現がこれでもかと注ぎ込まれている気がする。『ぼくらのウォーゲーム』の電脳空間のような、3Dを使ったタイムリープ描写、『どれみと魔女をやめた魔女』での5差路のような分かれ道。『ゲゲゲの鬼太郎』4期の時から使っている道路標識を使った表現。何よりも、魔女おばさんこと(かつての『時かけ』主人公)芳山和子は、前述の『どれみと魔女をやめた魔女』に登場した、悠久の時を生きるガラス職人の元・魔女の未来さん(声を演じるのは原田知世!)そのものだ。以前のインタビューで細田監督は「『どれみと魔女をやめた魔女』を作る時に大林監督版の『時かけ』は特に意識しなかった」と言っていたが、今回の芳山和子を創造する際には、元イメージにどれみ未来さんがあるように感じたのだがどうだろうか?