『肉弾』(1968) 監督:岡本喜八

ラピュタ阿佐ヶ谷は、俺が住んでいる所から1番近い映画館なのですが、通勤方向と真逆にあり、そこの前を通らないのが下手をすれば1、2ヶ月くらい平気であったりします。休みの日に阿佐ヶ谷駅前の書楽(本屋さん)などにはよく行くのですが、ラピュタの前は暫く通らないと言うのが続いて、何の特集上映をやってるのか知らないまま終わって後でラインナップを気づいて残念がる、と言うのを何回かした事があります。で、今回も、先日の休みに建物前のポスターを偶然見るまで「八月十五日、その日まで。なんて特集をやっていたなんて知らないままでした。『ハワイマレー沖海戦』や『キスカ』、『戦艦大和』に『ひめゆりの塔』等々。色々この夏に見たかった作品名が並んでいるなあ、残念!。それで慌てて今日なんとか時間を作って『肉弾』を見てきたのだけれど、いやあ、やはり面白いや。作風は軽妙にして、主題は重い。若き寺田農さんの熱演もいい(全裸の場面が長い!)。この時はまだ新人だったそうだけれど、信じられないくらいイイ味を出している。その寺田さん演じる”あいつ”の情けなくもみっともない、けれど少年兄弟を助ける場面など時には勇ましい、そんなキャラクター像が好ましい。直接的なバイオレンスとカタストロフを描いた『激動の昭和史・沖縄決戦』(15年ぶりに新文芸座の喜八監督追悼上映で見た、やはり凄い!)の方が個人的に好みだけれど喜八監督の私的な思いが詰まった『肉弾』は、監督にとって作られねばならなかった映画だったのだろう。『肉弾』は、『日本の一番長い日』の裏返し、当時の喜八監督たちの体験を、庶民側の長い一日を描いた映画だったのだから。