こうの史代『手紙』(エソラ二号)

何回目かの読み返しで、ようやく自分の中の解釈が落ち着く。何やら去年の秋に『夕凪の街 桜の国』を買った晩の事を思い出す。あのときも、何回も、何回も何回も、繰り返し繰り返し、夜が明けるまで読み返して、細かく描かれた演出や表現を咀嚼しようと試みたのだった。まあ、ここまで読まないと理解できないのは、少々俺の頭が弛みすぎてると言う所為もあるか。けれど、『夕凪の街 桜の国』も、『手紙』も、読み流したのでは表層的にしか判らないように描いているし。そう、確かに『手紙』は、文字文学では描けない、漫画ならではの表現に挑戦している。モノローグ文面とコマ絵の乖離っぷりが堪らなくいい。
漫画表現の成熟と可能性、文化的な意味など、いろいろ考えさせられる1作